| HOME PAGE|前のTopic |次のTopic | メールでのご注文はこちらからどうぞ|

Today's topic No. 618
  2023/11/17


  今秋、来日して東京、岐阜、京都、大阪でライブとワークショップを行なったアニー・スタニネッツ................

 



●BOOK-AS ANNIE STANINEC『Traditional Bluegrass Fiddle Solos』(52頁、webにてオーディオ付)Book(\5,300-)\5,830-(税込)一時品切れ中

 今秋、来日して東京、岐阜、京都、大阪でライブとワークショップを行なったアニー・スタニネッツ(ムーンシャイナー2016年3月号MS3305のカバーストーリー)、日系のフィドラーがブルーグラスフィドルの「キモ」を紹介してくれる抜群に有益なフィドル教本秀作! ムーンシャイナーでも詳細に解説していたようにカーリー・レイ・クラインやジョン・グリックなど、とてもマニアックなものからチャビー・ワイズ、ケニー・ベイカーまで、トラッドグラス系歌モノ間奏の完全コピー譜+解説である。

 決して有名曲や伝説的な演奏のコピー譜ではないが、アニー自身が弾く音源も、本に記されているコードを入力すればweb経由で聴ける。ただし、全体の雰囲気を含めて、チャンスがあればぜひオリジナル録音も聴くべし!

 「その美学はすぐに気付くようなものではないフレージングやシンコペーション、スライド、そしてブルーノートなどといったものから生まれてくる……通常の西洋12音階に慣れ切ったわれわれには、そのスタイルにアクセスするのはとても難しいと感じています」と、カーリー・レイ・クラインのコピーで感じたことをムーンシャイナー3月号で述べているアニー。

 以前に東京での「ステュアート・ダンカン・ワークショップ」でもステュアートが述べていたように、クラシックなどの素養のある人には聞き苦しい音程がオールドタイムやブルーグラスの肝になるということが、ここでもサンプルとして示される。

 この教本、有名曲や名演とされるサンプルではないところが、新鮮な取り組みを誘うことでいい効果を生み出すのではないだろうか。

 楽譜が読める人にとって、ブルーグラスフィドルの神髄に触れる最初の技術的な第一歩になるかもしれない、とても素晴らしい実践的なブルーグラスフィドル教則本である。
 



●AS-2015 ANNIE STANINEC CD(\2,450-)\2,695-税込

Long Time Travelin'/Just Wondering Why/Shady Grove/Steeley Rag/Plante Dans La Porte Da Ma Maison/Man of Constant Sorrow/Sinners Waltz/Rocky Island/Mike's Hoedown/Shallow Brown/March to Kinsale/Willow on the Lake/Madaline

 ブルーグラスフィドルのテクニックを持ちつつ、オールドタイムフィドルのグルーブを取り入れ、生来のエネルギッシュなノリを持った素晴らしいデビューアルバムを創ったのは宝塚フェスにも来ていたアニー・スタニネッツ。お母さんが大阪の人で、関西のオールドタイム系の人たちとも交流があった(ムーンシャイナー2016年3〜4月号で前後編特集参照!)。現在、ウエストコーストの名門、キャシー・キャリック・バンドに在籍。師匠筋になるのだろうポール・シェラスキー(fd)のほか、ジョン・ライシュマン(md)とパトリック・ソウバー(bj)、アイバン・ローゼンバーグ(db)らという西海岸のトップアーティストにピーター・ローワンやキャシー・キャリックをゲストに、ブルーグラスの美味しいところをキッチリと踏まえつつ、アパラチアンケルト的な幻想や南部ルイジアナのダンサブルなケイジャンのエネルギーも味わえ、全編に素敵なフィドルとボーカルがが聴ける素晴らしいアニーのデビューアルバムだ。

 宝塚フェスに来ていたのは中学生の頃だったか、そののちもIBMAなどでよく会っていたアニー。

 ピョンピョンと飛び跳ねて弾くエネルギッシュなフィドラーとして注目を浴びていたのだが、いつ頃からか、おそらくキャシー・キャリックのバンドに入るようになってからはとてもオールドタイミーなフィドル感覚を身に付けてとても個性的な味のあるフィドラーに大きく成長しての初ソロアルバムである。

 セイクレッドハープ曲をバンド用に編曲したという素晴らしい1曲目“Long Time Travellin'”から思い切りのいいボーカルも秀逸、ピーター・ローワンの見事なまったく衰えない艶やかなボーカルをフィーチャーし、デュエットするジム&ジェシー曲“Just Wondering Why”とつづくワクワクするような選曲。

 つづくすばらしいグルーヴで聴かせる“Shady Grove”とスタンレーで有名な“Man of Constant Sorrow”を素晴らしいブルーグラスフィドルに載せて聴かせる間にはさまれた2曲、テキサスフィドラーのA.L.スティーリーからの“Steeley Rag”で聴かせる見事なフニャフニャ(これがクラシック系の人にはとくに難儀なテクニックらしい……)なコード感覚、そしてアコーディオンとのデュオで聴かせるケイジャンフィドル“Plante Dans La Porte De Ma Maison”にみるアメリカンフィドルの幅広さへの憧憬など、ここ数年で学んだのだろう。イーリアンパイプをバックにしたアカペラっぽいバラッドも含めて、自身が弾くブルーグラスフィドルへの筋道を理解しようとする姿勢が感じられるような秀作である。

 テクニックに走りがちな21世紀の若者ブルーグラスがそのルーツの存在に目を向け、さまざまなプリミティブな音楽から学んだものを自身のスタイルに取り入れはじめている。その軽々とした身のこなしがじつに爽快、そんな気持ちにさせてくれるアニーのソロデビュー作、フィドルとボーカルともに、キラキラした若さが素晴らしい!!
(渡辺三郎)
 




●RSR-217 ANNIE STANINEC AND NICK HORNBUCKLE『Twin Sisters』CD(\2,450-)\2,695-税込

Twin Sisters/Pretty Little Indian/Flannery's Dream/Hell Broke Loose in Georgia/Belles of Blackville/Chinquapin Pie/Walk Along John/Ducks on the Mill Pond/Pa Janvier/Ninety Degrees/Piney Ridge/Dry and Dusty : Duck River/Little Rabbit全13曲

 今年(2023年)の10月にパートナーのジョン・カイルと共に来日、各地で素晴らしいフィドルを披露したポートランド在住の日系フィドラー、アニー・スタニネックとブリティッシュコロンビアのバンジョー奏者、ニック・ホーンバックルのコラボレーション。

 1986年サンフランシスコ生まれで17歳の時に宝塚フェスに参加、現在はキャシー・キャリックのバンドやウィスキー・デフでフィドルを演奏し、数年前には英国のロック・スター、ロッド・スチュワートのワールド・ツアーにフィドルとバンジョーで参加。

 ニックはジョン・ライシュマン & ジェイバーズのメンバーで、トニー・エリスを彷彿とさせるメロディックな2フィンガー・スタイルで演奏しており、トニー・エリスがライナーノーツで賛辞を寄せている。

 収録曲はイギリス起源の "Twin Sisters "を皮切りにカーリー・レイ・クラインの印象が強い"Pretty Little Indian"、ジョン・ハートフォードが『Wild Hog in the Red Brush』で取り上げていたエド・へイリーの"Flannery's Dream "はアニーのソロ。

 フィドリン・ジョン・カーソンの"Hell Broke Loose in Georgia"。

 ジェームス・ブライアンがカール・ジョーンズと共演した『Two Pictures』に収録されてた "The Belles of Blackville "。

 ニックのソロ・バンジョーによる"Chinquapin Pie"はバージニアのホバート・スミス由来、チンカピンは食用の木の実とのこと。

 ジョン・ライシュマンのアルバム・タイトル曲でもある "Walk Along John "。カイル・クリードとトミー・ジャレルが録音を残している"Ducks on the Millpond" 。

 アニーのソロによる"Pa Janvier"は、FCGDというチューニングのケイジャン・チューンで、アニーがソロで弾いている。

 オールドタイム・フィドラー、ブラッド・レフトウィッチ作"Ninety Degrees"。

 ニックのソロで美しく演じられる"Piney Ridge"に続いてよく似た曲調の"Dry and Dusty "と "Duck River "のメドレー。

 最後は"Little Rabbit"、リチャード・グリーンがピーター・ローワンとレッド・ホット・ピッカーズで来日した時の演奏が強烈な印象として残っている。

 全ての曲のフイドルとバンジヨーのチューニングが明記されているのでプレイヤーにも嬉しい。素晴らしいオールドタイム・フィドル&バンジョー集。

  ☆☆ビー・オー・エム・サービス(御注文は:TEL 0797-87-0561:FAX0797-86-5184:E-MAIL order@bomserv.comにて承ります。☆☆