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Today's topic No. 583
2023/3/10
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火を吹くようなハード・ドライビング・ブルーグラスではありませんが、非常に良くプロデュースされた上質のサウンドに寄る耳に優しい作品で、コンテンポラリー・トラディショナル・スタイルとでも呼ぶべき、新しいソリッド・ブルーグラス。
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●REB-1876 STARLETT & BIG JOHN『Living In The South』CD(\2,450-)\2,695-税込
Makin' Tracks to Macon/The Ties That Bind/Quit Quittin' You/Living in the South/Settin' the Woods on Fire/Straight 58/Back Away Little Heart/Slowly Let Me Down/Clean Slate/Makeup and Faded Blue Jeans/The Dirt That You Throw/My Brown Eyed Darling/Safely in the Arms of Jesus/Deepening Snow
バージニア州南部の出身、17歳でニュー・ドミニオン・ブルーグラスのメンバーとしてビル・モンローのゲストとしてグランド・オール・プリーに出演したというビッグ・ジョン・タリーとボスウェル・ファミリーのベース
& ボーカルとして活動していたスターレット・ボスウェル・オースチンの二人が3年前からデュオとして活動をスタート、2021年にカリフォルニアのターンベリー社からリリースした『Till
The End Of The Road』に続く、レベル社からのデビュー作『Living In The South』。
4歳で歌のコンテストで優勝、8歳でベースを始めたというスターレットの素朴で力強く、時にアリソン・クラウスのように囁くように口ずさみ、情感たっぷりに歌い上げるボーカルはオクラホマの女性ブルーグラッサー、デリア・ベルを髣髴させます。
彼女のタイミングの良いベース・プレイにも注目です。
9歳でギターを始め、ビル・モンローを始めとして、ジョディ・レインウォーター(F & Sのベース奏者)、テイター・テイト、ジャッキー・フェルプス、バージニア・スクワイアーズ、ワイアット・ライス等と共演経験を持つビック・ジョンは甘い包容力のある声質によるリード・ボーカルとコーラスで見事にスターレットとの声と溶け合い、見事なハーモニーを聞かせてくれます。
プロデュースにはJ.D.クロウ & ニュー・サウス、ボックスカーズ、最近はセルダム・シーンのメンバーとして活動するロン・スチュアート、本作では主にフィドル、タイトル曲ではドブロ、ハーモニー・ボーカルも担当しています。
前作に続いて、マンドリンにはジュニア・シスク・バンドでシュアなプレイを披露しているジョナサン・ディロン(m)、バンジョーにはダレル・ウェッブ・バンドのメンバーとしても活動したデビッド・キャロル(bj)という腕利きがサポートしています。
前作『Till The End Of The Road』の先行シングルのタイトル曲はさしずめ「お前百までわしゃ九十九まで」といったオーセンティックなテーマ他、自身のオリジナル"I'llHaveYou Back"に加えてモンローの"True Life Blues"、"Sugar Coated Love"やアール・テイラー"The Children Are Crying"等のカバーも収録していました。
本作『Living In The South』は全14曲中、6曲のオリジナルと8曲のカバーが収録されています。
皮切りはビッグ・ジョンとスターレットがボーカルを分け合う軽快な"Makin' Tracks to Macon"、ノース・カロライナを本拠とするダイアモンド・クリークのバーニー・ロジャース作のトリオ・ナンバーでトニー・ライスばりのリード・ギターもフィーチャーされています。
スターレットのコブシの効いた歌がヒルビリー風味満点の"The Ties That Bind"、ラリー・スパークスに歌わせたい曲調の"Quit Quittin' You"、ロンのドブロをフィーチャーしてスターレットが切々と歌い上げるタイトル曲と様々な表情を魅せるオリジナル曲が続いた後にハンク・ウィリアムスの"Settin' the Woods on Fire"という選曲の妙、デンプシー・ヤング(m)とジーン・パーカー(bj)を擁した時代のロスト&ファウンドを思い起こさせる小粋なアレンジが秀逸です。
フィドル・チューンの"Cherokee Shuffle"をモチーフにした"Straight 58"はバージニア州とノースカロライナ州の州境を東西に走る国道58号線を、バージニア州サウザンプトンのスタジオから西へ車で帰る途中、スターレットが口にした捨て台詞をもとに書かれました。
ディキシー・ジェントルメンのジェイク・ランダースが自身のバンドで取り上げていた"Back Away Little Heart"は渋い選曲。
正統派カントリーのブルーグラス・アレンジといった趣の"Slowly Let Me Down"ではチョーキングを上手く使ったバンジョーのスチール・ギター・リックやマンドリンもツボにはまったプレイが聞かれ、ここでもスターレットの説得力あるボーカルが冴えています。
バウンシーに演じる"Clean Slate"に続いてビッグ・ジョンの歌とリード・ギターをフィーチャーしてマール・ハガードの"Makeup and Faded Blue Jeans"では各楽器のバトルも楽しめます。
ビル & ジェームス・モンローの"I Haven't Seen Mary In Years"や"Tall Pines"、オズボーン・ブラザーズの"Arkansas"の作者として知られるデイモン・ブラックのペンによる"The Dirt That You Throw"、デリア・ベルがカウンティ盤で取り上げていました。
ポール・ウィリアムス作でロンサム・パイン・フィドラーズの名演が印象に残る"My Brown Eyed Darling"、セイクレット・ソング"Safely
in the Arms of Jesus"ではロン・スチュアートがフラット & スクラッグス好きをニンマリさせるフィドル・プレイを披露、最後はビッグ・ジョンのギター1本でコニー・スミスのヒット曲"Deepening
Snow"をスターレットによる素晴らしいボーカルと二人のハーモニーで幕を閉じます。
火を吹くようなハード・ドライビング・ブルーグラスではありませんが、非常に良くプロデュースされた上質のサウンドに寄る耳に優しい作品で、コンテンポラリー・トラディショナル・スタイルとでも呼ぶべき、新しいソリッド・ブルーグラスと評価されています。
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