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Today's topic No. 017
  2016/9/8

 このところ、次々と発表されるブルーグラスを知り尽くしたベテランたちの心のこもったアルバム、その最高の一枚。今年59歳になるジェフ・ホワイト、なんと18年ぶり、自費制作の最新ソロ第3作。チャーリー・クッシュマン、マイケル・クリーブランド、ビンス・ギル、ロニー・マッカーリー、ダン・ティミンスキ、ジェリー・ダグラス、アリソン・クラウスほか、気心の知れたバンド仲間たちのバックアップで入魂の超お薦めブルーグラス作品。
 


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JW-316 JEFF WHITE『Right Beside You』CD(本体\2,450-)\2,646-

Run Little Rabbit Run/Blue Trail of Sorrow/Right beside you/The Cold Hard Facts/Traveling this Lonesome road/Another Road/Ain't Gonna Work Tomorrow/Carry Me Across the Mountain/Wise County Jail/Climbing Up a Mountain/Buck's Run/Pretty Saro.

 これぞハードドライビング「ブルーグラス」といった目一杯にドライブするチャーリー・クッシュマンに火の出るようなマイケル・クリーブランドのフィドルの1曲目“Run Little Rabbit Run”はストリングビーン作。

 ビル・モンロー美学を結晶したようなマイケルとローラ・ウェーバー・キャッシュ(瀬戸大橋にいて宝塚フェスにも来てくれた)のツインフィドルが心を揺さぶり、ダン・ティミンスキとジェリー・ダグラスらを配し、ビンス・ギルとのハーモニー2曲目“Blue Trail of Sorrow”は自作。アリソン・クラウスをハーモニーに迎えての3曲目“Right Beside You”は自作でタイトル曲にしている。そのほか、超話題のアールズオブレスターのメンバー全員によるフラット&スクラッグス“Ain't Gonna Work Tomorrow”、デル・マッカーリーとのデュオで聴かせるモンローソング“Travelin' Lonesome Road”、ドック・ボッグズが1928年に録音した“Wise County Jail”、ヘイゼル・ディッケンズの子供時代の実話を基にビリー・スミスと共作した“Carry Me Across the Mountain”(ダン・ティミンスキのデビューソロのタイトル曲だった)、バック・ホワイトの名作をロニー・マッカーリーとビンス・ギルのツインマンドリンをフィーチャーした“Buck's Run”はフラットピッキンギターインストに、そして最後はザ・チーフタンズをバックに旧大陸のケルトの地から新大陸アパラチアに移住するというバラッド“Pretty Saro”で締める、「ブルーグラス愛」を高らかに謳い上げるジェフ・ホワイト入魂の超強力ブルーグラス作品。

 タイトル通り、これまでジェフのとなりで彼を片腕と目してキャリアを築いてきた有名人、アリソン・クラウスやビンス・ギル、そしてチーフタンズのほか、ジェフが曲を提供してきたデルやダン、そして朋友ジェフ・ガーンジー(ふたりジェフで来日している)の教え子で子供の頃からサポートしているマイケル・クリーブランドやフラットヘッド時代からの僚友チャーリー・クッシュマンら気心の知れたメンバーに囲まれて創られたジェフ・ホワイト、なんと18年ぶり、自費制作の最新ソロ第3作。

 1957年ニューヨークのシラキュース生まれだが13歳のときに北インディアナのノースマンチェスターに移ったという。

 ちょうどその頃にはじまったCBSテレビのコメディ番組『Hee Haw』(1969-1971、そののちローカルで20年以上放映)でカントリーやブルーグラス音楽を知ったという。

 高校に入ってギターを手に入れサイモン&ガーファンクルをはじめ、ジェイムズ・テイラー、ボブ・ディラン、ジム・クロウチ、シールズ&クロフツやキャット・スティーブンスなど70年代フォークやポップにはまり、大学に入学したときに同じ寮のマンドリンを弾く友人からドック・ワトソンを教えられブルーグラスの世界へ……。大学ではもちろん、学業そっちのけでブルーグラス三昧。

 1979年のケンタッキー・フライド・チキンが主催するルイビルのフェスでコンテストに優勝、賞金と同時にナッシュビルでのシングル盤制作で初めてナッシュビルを訪れたという。

 そののち改心、大学院で社会学を専攻するも、通いはじめたキンゼイ研究所(かのリポートで有名)のあるインディアナ大学はインディアナ州ブルーミントン、つまりビーンブロッサムのすぐ近く。

 活発なブルーミントンのオールドタイムやブルーグラスシーンに入りびたり!?教授から、音楽の道を進んだ方がいいとの指導を受けたという。

 ビーンブロッサムでは13歳の天才少女フィドラー、アリソン・クラウスに出会っている。

 3年後、16歳になったアリソンとユニオンステーションでフルタイムミュージシャンの道を歩む。

 アリソン・クラウスのユニオンステーションのメンバーとして『Two Highways』(1989)で知られることになり、つづく『I've Got That Old Feeling』(1990)でも活躍、同作から“Steel Rails”がヒットし初のグラミー受賞、そののちのアリソンの輝かしいキャリアのスタートをサポートしている。

 1991年、ユニオンステーションを退団して瀬戸大橋のフィッシャーマンズワーフの仕事で来日、香川県坂出市に移住、ここで日本との結びつきを強くする。翌1992年、アメリカに戻り、ナッシュビルのステーションインでザ・サイドメンなどとも活躍する中、ティム・オブライエンを経てビンス・ギルのサイドマンとなり、以来25年間、現在もビンスの片腕として活躍をつづけている。

 ビンスのサイドマンをつづけると同時に2002年、アイリッシュのザ・チーフタンズのプロジェクトにプロデューサー/ミュージシャンとして参加、2012年のチーフタンズ50周年ワールドツアーにも参加、最終公演地である日本でも10ヶ所をツアーしている。私事だが、このときジェフに誘われ、チーフタンズとの共演をさせてもらった。そのほかにも、ライル・ラベットやスティーブ・アール、ナンシ・グリフィスらのツアーにも参加しているミュージシャンズミュージシャンである。

 ここで聴かれる強烈なブルーグラスのインパクトとは正反対に、信じられないほど穏やかな好人物ではある。

 ジェフ・ホワイト58歳、サイドマン……というよりも、ブルーグラスというアンサンブル音楽の駒のひとつとして確実な仕事をこなしてきた、とても深いブルーグラス信奉者、そんな日本人の心象にぴったりとくる性格から生み出された奥ゆかしさを感じつつ、超一級のブルーグラス作品に仕上げている。

 凄いぞジェフ!!

https://www.youtube.com/watch?v=iFleZbIHRWw

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